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    三宅島へやってきたザトウクジラの鼻水から地球環境を読み解く。(前編)

    田島 木綿子
    研究総括
    国立科学博物館 動物研究部
    沖山 雄一
    プロジェクト総括
    Cafe691オーナー
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    2024.1.24

創業以来、「視る」という観点から、社会に貢献して続けてきたZEISS。サスティナブルな社会の実現に向けても様々な場面でその価値を提供しています。

今回は、国立科学博物館 動物研究部 田島木綿子先生も中心メンバーとして参画している「三宅島クジラ鼻水プロジェクト」による、クジラ調査の軌跡と背景に迫ります。

冬季には温暖な海域を泳ぎ、夏季には寒冷な海域へと移動するとされるザトウクジラ。日本近海では冬から春にかけて、沖縄や小笠原諸島などの温かい海域で出産・子育てし、夏になると豊富なエサを求めて、より北方のベーリング海で過ごすとされていました。

しかし近年、小笠原諸島の北にある伊豆諸島 八丈島では2015年ごろから、三宅島では2018年ごろから、冬春季にかけて姿を観測できるようになりました。突如現れた理由に関して、地球温暖化が影響しているとも推測されていますが、“よくわかっていない”というのが現状です。

当プロジェクトは、東京都 三宅島にある「Cafe 691」のオーナー 沖山雄一さんが発起人。
三宅島近海で突如観測されるようになったザトウクジラを中心に、地球温暖化への生物適応を調査・研究し、啓発へとつなげるサスティナブルなプロジェクトです。

その調査方法に大きな特徴があり、ザトウクジラの鼻水(潮吹き)めがけて、陸上からドローンを飛ばし鼻水を採取するというもの。ドローン調査は、動物にとってやさしい方法として認知されていますが、国内では当プロジェクトが初の試みとなります。

鼻水からは、病原体(ウイルス・寄生虫)や体細胞(DNA)が検出できるため、クジラの健康状態だけでなく、世界中のザトウクジラとの血縁関係も明らかに。クジラの鼻水は、「三宅島のザトウクジラはどこから来たのか?」「どの個体と近い関係にあるのか?」といった疑問を解明するヒントになるそうです。

今回の調査は、2023年12月9日から11日にわたる3日間。テキストで表現すると非常に簡単なように感じますが、その実、非常に高い“技術と根気”が必要な取り組みでした。
調査の流れを簡単に説明すると、

①早朝より三宅島のクジラ観測スポットへ移動
②プロジェクトメンバー全員でクジラの鼻水を探す
③見つけたら「ブロー!」(「潮吹き」と同義)と叫びメンバーに情報共有
④条件が揃えばドローンで近づき、鼻水の採取を試みる

というものですが、ほとんどの時間が②〜③の繰り返し。調査の9割以上が鼻水を見つけるために海とにらめっこをする時間になります。

条件が揃ってドローンを飛ばすステップまで進んだとしても、数百メートル以上離れたブローを頼りに、ドローンで近づき鼻水を採取するのは至難の業。限られた時間の中、わずかなチャンスを無駄にしないよう、ドローン技師の表情は常に真剣そのものでした。

当プロジェクトにおけるドローン統括を任されるKURIKURICRAFT合同会社代表 藤井 雅己さんは「ここ数年、三宅島でクジラがみられるようになったけど、三宅島で繁殖したっていう証拠となるような“生まれたてのクジラ”はまだ見つかってない。鼻水採取はもちろんだけど、赤ちゃんクジラをドローンで撮影することも個人的には目標にしています。」と語ります。

様々な方が参画するプロジェクトだからこそ、多様な想いが交差するという点も当プロジェクトが支持される魅力のひとつなのかもしれません。

時には約2キロ以上離れた場所で発生するザトウクジラのブローを確認し、飛行するドローンを目視し続けるには高性能なZEISS双眼鏡が必要となります。また、病理解析をする際にもZEISS製の高性能顕微鏡を活用いただいております。

さらには、ZEISS社員もプロジェクトメンバーとして実際に参加することで、プロジェクトの進捗や課題を肌で感じ、最適な形でのサポートを模索し続けております。


紫外線量に合わせてレンズのカラーが変化する調光レンズ「ZEISS フォトフュージョンXレンズ」。レンズの感光性が極めて高く、素早く発色・退色してくれるため、一日中外にいるようなアウトドアシーンでのご利用に最適です。ブルーライトカットやUVカット機能も備えており、経年劣化も少ないため、長期間お使いいただける製品となっています。


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田島 木綿子
研究総括
国立科学博物館 動物研究部
バンクーバーで出合った野生のオルカ(シャチ)に魅了され、海生哺乳類の研究者として生きていくと心に決める。 普段は海生哺乳類のストランディング個体の解剖調査や博物館の標本化作業で日本中を飛び回っている。
沖山 雄一
プロジェクト総括
Cafe691オーナー
クマノミが雌雄同体であることを発表した海洋生物学者ジャック・モイヤー氏と過ごした三宅島での経験を活かし、本プロジェクトを推進。世界中へ三宅島の情報を発信している。
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