• 作る人

    レンズサプライヤーから
    ビジネスパートナーへの転換。
    ツァイスが目指すべき未来とは。

    乾 大輔
    カールツァイスビジョンジャパン
    マーケティング責任者
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    2022.11.30

〈カールツァイスビジョンジャパン〉の本社ショールームで自社開催した展示会「Kojimachi Optical Fair 2022AW at ZEISS」の第2回目が10月に行われました。春に開催した第1回目から参加ブランドが新たに追加され、来場者も約3倍に。ツァイスの新規トピックとして、来店予約システムのお披露目もありました。今回は本展の主催者である〈カールツァイスビジョンジャパン〉でマーケティング責任者を務める乾 大輔さんに、展示会の振り返りと今後の展望を伺いました。

フレームとレンズの作り手同士の強い繋がりを体感。

第1回目と比べて、参加ブランドが4から7ブランドに増えましたね。どんな背景があったのでしょうか?

前回、参加ブランドや来場者問わず好評をいただいたこともあり、思い切って参加ブランドを増やして挑戦してみようと思ったのがきっかけです。前回から継続して〈ファクトリー900〉〈マイキータ〉〈マサヒロマルヤマ〉のほか、今回新しく〈シャルマン〉〈増永眼鏡〉〈シルエット〉〈ヴァトック〉の5ブランドに参加いただき、会場も2フロアに広げて展開をしました。

今回開設された別フロアの様子。

私たちレンズメーカーとフレームメーカー、そして小売店が揃って、初めてメガネが完成します。ブランドの考え方やテイスト、歴史などにおいてツァイスと親和性があるフレームブランドはもちろんのこと、当社の考え方に共感してくださるブランドさんに来ていただきたいと思い、お声掛けさせていただいたという経緯です。

出展ブランドもそうですが、来場者も前回に比べてかなり増えたそうですね。

各社様がそれぞれ積極的に告知をしてくださった結果、来場者も前回の約3倍と大盛況でした。ツァイスの取引先である海外の小売店など、前回に比べて海外からのお客様も増えましたね。また会場では「他のブースもぜひ見てください」と皆さまが積極的にお声がけしてくださったおかげで、高い回遊も実現できたのかなと思います。

お客様対応をする〈シャルマン〉スタッフ。

各社、それぞれのブランドらしさを反映した個性豊かなブースや商品でアピールされていましたね。それを見て、どう感じましたか?

各ブランドさんには、自由にブース作りをしていただきました。製品へのこだわりが深いだけあって、メガネの見せ方やPOPなど細やかなところにそれが表現されていましたよね。注目の新商品やトレンドも一挙に分かるので、情報共有の場としてもかなり意義のある展示会だったと思います。各社の熱意やこだわりを体感し、ツァイスのレンズを入れてもらいたいなと改めて感じました。

ツァイス側も、測定器「i.Profiler®plus」や、メガネをバーチャル試着できる「ZEISS Virtual Try-on」などのサービスを体験してもらいやすいブース作りを意識しました。新商品であるオリジナルカラーレンズはその色遣いとバリエーションを、ディスプレイに関しても「高級感があるね」と多くの方に褒めていただきました。

ドイツブランドならではのスタイリッシュさが目を引くツァイスの展示ブース。新発売のツァイスオリジナルのカラーレンズが並ぶ。

各社、気になるアイテムなどはありましたか?

〈マイキータ〉は、独特な質感の3Dプリンタのポリアミドという素材とステンレスシートを組み合わせた異素材コンビが特徴的なコレクションが印象的でした。〈マサヒロマルヤマ〉は2022 SILMO d'Or サングラス アイウェアデザイナー部門 グランプリ受賞フレームのコレクションテーマを象徴するモデルや、金継ぎのように修復された陶磁器の不規則なラインをデザインに落とし込んだ新作“Kintsugi”など、各ブランドらしいユニークなアイテムを拝見することができました。

〈マイキータ〉の展示ブース。
〈マサヒロマルヤマ〉の2022 SILMO d'Or サングラス アイウェアデザイナー部門 グランプリ受賞フレーム。

個人的に気になったのは、NASAで世界最年少の飛行訓練生が〈シルエット〉のメガネを掛けていて、2030年に計画されている火星着陸ミッションを目指しているそうです。宇宙飛行士に選ばれたメガネということで、同じく興味を持たれる方も多かったように思います。

〈シルエット〉の展示ブース。

また、〈ファクトリー900〉はブランドとして初となるメタルフレームコレクションの発表があったり、〈ヴァトック〉も、新規で取り扱うことになった〈ベリンガー社〉のブランドのお披露目があったり。〈ヴァトック〉は20周年記念のコレクション“FLEYE”も人気だったようです。

〈ファクトリー900〉の展示ブース。
〈ヴァトック〉の展示ブース。新規取扱の〈ベリンガー社〉のフレームが並ぶ。

〈増永眼鏡〉や〈シャルマン〉は、さすがたくさんのラインナップが揃っていました。

そうですね。言わずと知れた〈増永眼鏡〉は、福井県のメガネ産業の基盤を作ったと言われています。〈シャルマン〉は、以前からグローバル化に力を入れていて世界100カ国でフレームを販売している。世界的に見ても影響力がある2社です。

〈シャルマン〉は、看板商品である“Line Art Charmant”を幅広い年代にアプローチしているだけあって豊富なラインナップを魅せていただきましたね。〈増永眼鏡〉は、リムレスフレームの新作を久しぶりに発表したそうで、今回持ってきてくださいました。

〈シャルマン〉の展示ブース。
〈増永眼鏡〉の展示ブース。

乾さんは各ブランドさんとさまざまなお話をされたかと思います。どんなフィードバックがあったのでしょうか?

今回新しく「ZEISS Virtual Try-on」がご自宅でも使えるようになりました。これにはフレームメーカーも協業できるので、好評いただきましたね。一緒に「ZEISS Virtual Try-on」を体験できるイベントをやったら面白いよね! という話で盛り上がりました。

他にも、「プレミアムなレンズメーカーが主催の展示会となれば、フレームメーカーのクオリティの高さをアピールでき、世界観もより深く体感していただける」「フレームだけで完結せず、レンズとのマッチングなど可能性を感じる」など、前回同様に満足度の高いお声掛けをいただいて嬉しい限りです。

また、〈シルエット〉を取り扱う三共社のマーケティング担当の方と話したのは、「ブランドのバックグラウンドをもっと大切にしたい」ということです。ツァイスは175年以上の歴史を持ち、過去から現在、光学分野においてイノベーティブな製品をたくさん開発してきましたし、先ほども紹介した、宇宙飛行士に選ばれた〈シルエット〉のメガネも、過去から未来にバトンを繋ぐ希望のひとつになっています。そういったストーリーに共感したお客様に私どもの製品を選んでいただきたいと、ますます感じています。

店舗サービスを支える、来店予約システムをお披露目。

店舗での利用を目的とした、来店予約システム「ZEISS Appointment and Resource Management Platform(A.R.M Platform)」が初お披露目でしたね。こちらについて、詳しく教えてください。

これまでツァイスは、店舗で使う測定器「i.Profiler®plus」や、メガネをバーチャル試着できる「ZEISS Virtual Try-on」などのサービスを展開してきました。今回そこからさらに広がって、来店予約システムの開発を行いました。

「A.R.M Platform」は、お客様がメガネを作る際や修理など、来店接客が必要なサービスをweb上で予約することができるシステムです。お客様にとっては、web上の方がスムーズに予約や確認、変更ができますし、同じく店舗スタッフにとっても、効率良く予約を管理できるのが特徴です。電話応対によるメモの取り間違いやダブルブッキングなど、店舗運営における課題を解決することも狙いのひとつ。

「A.R.M Platform」を体験する来場者。

さらに、顧客のデータやスタッフのシフト管理なども、同じシステム内で行うことができます。今まで店舗がリソースマネージメントに費やしてきた負担を減らし、より良いサービスに注力することに、貢献できればと思います。

メガネ店とお客様、どちらのことも考えられた細やかな設定が素晴らしいなと思いました。実際に使っていただいた皆さんの反応はどうでしたか?

皆様にはご自身のスマートフォンを使って、お客様目線で使っていただきました。「使いやすい!」という声が多くて安心しました。アプリや会員登録なども不要なので、すぐに使っていただけるのも良かったようでしたね。12月から一部店舗でパイロットテストを開始すべく、現在調整中です。

この来店予約システムの他にも、今回で初めて「i.Profiler®plus」や「ZEISS Virtual Try-on」。を初めて知っていただいたお客様には「レンズ作りに留まらず、新しい取り組みをされていますよね!」と、ツァイスが展開する幅広いサービスを知っていただく好機になったのかなと思います。

レンズだけを売るのではなく、ツァイスはあらゆる側面から適切なメガネ作りに向き合っているという訴求を続けて、満足度を高めていきたいと改めて感じています。

日本のレンズ業界で、ツァイスはチャレンジャーな存在。

展示会を経て、社内メンバーとの振り返りでは、どんな声が上がったのでしょうか?

社内からは、改善点も含めて、次回の開催に向けてたくさんの良い意見が出ましたよ。例えば「ツァイスは100年以上サステナビリティに力を入れているから、それを紹介するコーナーを作りたい」とか「世界中に販売網があるツァイスの海外ビジネスの事例を紹介したらどうか」など。ツァイスの製品をより積極的に手に取ってもらうためのアピールを、展示会を通じてもっともっとしていきたいなと。

次回は来年春に開催予定とのことですが、次回の展望などを教えていただけますか?

フレーム業界と違って、レンズ業界は季節毎に必ず新作が出るわけではないのですが、来春もツァイスの最新技術やサービスを知っていただく機会にする予定です!

ここ10年以上、メガネ業界の市場規模は大きな変化がないと言われています。だからこそ、チャレンジャーであるツァイスが主体となって、もっと業界を盛り上げていきたいと考えています。ツァイスはレンズメーカーではなく、フレームメーカーや小売店の“ビジネスパートナー”として、快適なメガネ作りをサポートできるように新しい挑戦を続けたい。そのことを多くの方に知っていただくために、展示会を続けていきたいです。

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乾 大輔
カールツァイスビジョンジャパン
マーケティング責任者
カールツァイスビジョンジャパン㈱/マーケティング責任者。国内大手フレームメーカーで約12年営業を経験した後、小売向けコンサルティング会社にてコンサルタント、事業会社でのマーケティングに従事。その後2021年にカールツァイスビジョンジャパン(株)に入社、2022年1月から現職。英国国立アングリア・ラスキン大学院MBA修了。
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