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    その時々の自分に
    寄り添ってくれるメガネを
    たくさん手に取れるといい。

    川上未映子
    小説家
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    2021.10.6

『夏物語』や『ヘヴン』などの作品が、国内のみならず海外でも高い評価を得る、小説家の川上未映子さん。服やコスメのことを綴るコラムも、好きなものへの一直線な愛に溢れ、彼女なりのスタイルと個性が感じられるのが素敵だ。ファッションの一部としてもメガネを楽しんでいるという川上さんは、日々どのようにメガネを楽しんでいるのか。おしゃれで機能的なツァイスの調光レンズも試してもらいました。

仕事にも、おめかしにも、
メガネは欠かせないもの。

メガネを掛けはじめたのはいつ頃ですか?

視力が悪いと気づいたのは7〜8歳の頃でしたね。ピンクのメタルフレームのようなメガネを、初めて選んだのをよく覚えています。当時、アメリカの作家の訳書で、メガネを主題にした童話『アーサーのめがね』をよく読んでいました。生き物の学校が舞台のシリーズもので、目が悪い主人公がメガネを掛けるまでの葛藤を描いた内容で。そうしたらこの間、30年の時を経て、息子が図書館からたまたまそれを借りてきたんですよ。本の存在をすっかり忘れていたものだから、懐かしくて。

それは嬉しい偶然ですね。いつもどのようなシーンでメガネを着用していますか?

基本的に昼間はコンタクトレンズをつけて活動していますが、長時間は難しいので、メガネの出番も多いです。裸眼では視力が0.03しかなくて乱視もひどいので、ベッドサイドにも必ずメガネを置いています。パソコンに向かう時はブルーライトカット、ちょっと屋外に出る時は少し濃い色のUVカットと、目的によって使い分けることが多いですね。執筆時はカーテンを閉めて部屋を暗くして、できるだけパソコンの光も抑えて、白い画面でなく薄いたまご色やピンク色の背景で作業をするんです。それでも長時間画面に向かううちに目がチカチカしてきたり、乾燥してきたりするので、ブルーライトカットのメガネを掛けています。

いま掛けているメガネも素敵ですが、どんなふうに選んでいますか?

いくつあってもいいものなので、本当は違うタイプのものを揃えるのがいいんでしょうけど、どうしてもピンク色のものなど、掛けて気分の上がるカラーのメガネを選んでしまいますね。あとは、スッピンに掛けるだけで決まる、定番の黒縁メガネとか。私は目と目の幅が少し広いので、だいたいのメガネが似合わないと思っていたんですが、最近になって、こういう大きなフレームはわりとしっくりくることに気づきました。

好きなブランドはありますか?

〈クロエ〉〈プラダ〉〈グッチ〉などのブランドは、大きなフレームのメガネをよく出しているのでチェックしています。形が良くて気に入っても、リムがパッドと一体化しているとメガネがずり落ちてきてしまうので、独立したノーズパッドがついているものを探します。けれど、あまり多くないので、見つけたら買うようにしていますね。今日掛けている〈グッチ〉のメガネも、パッドがついているのが決め手でした。

掛け心地も大切ですよね。いつもどこで探していますか?

これは新宿伊勢丹で見つけました。路面店にも行きますが、限られた時間でバイヤーさんが厳選したものがたくさん見られるから有り難いんですよ。出先でサングラスを忘れたことに気づいて、伊勢丹に寄ってパパっと買ってしまうこともあります。だから、自然と増えてしまって、すでに15〜20本になるでしょうか。アクセサリーのような感覚もありますね。

個性、好み、スタイル……
メガネはその人の多くを語る。

川上さんのメガネスタイルも、印象がガラッと変わってオシャレですね。

でも、自分が楽しむより人が掛けているのを見て、この人オシャレだなとかご自身のことをよくわかっていらっしゃるなと思わされるシーンの方が多いですね。例えば、ジョン・レノンのような丸メガネがしっくり来ている方を見ると、そう感じます。メガネって個性が出るし、その方を知るひとつの取り掛かりになるようなアイテムですよね。主張のあるメガネを掛けていれば、そういうスタイルの方だなというのがわかる。メガネは多くを語りますね。

川上さんご自身は、どんなふうに楽しんでいますか?

いつも単体で着るワンピースに、ポイントになるサングラスをあわせると、モードからもう一段上がったような感覚になる。そういう組み合わせが楽しいですね。

今日のコーディネートも、メガネがひとつのポイントになっていますね。

このピンク色もそうですが、ブラウスやフリル、70年代のフラワープリントとか、ちょっとロマンティックなものが好きなんですよね。アレッサンドロ・ミケーレさんがデザインするようになってからの〈グッチ〉もそうです。自分が女性として与えられてきた文化とどう違うのかを考えると、ジェンダーロールのひとつなのかなという葛藤もあります。いろいろなものを手に取る機会もあったわけで、それでも好きなものというのは、本当に好きなんだと思えるんです。今日のようにどこかマニッシュなアイテムに対してもブラウスを合わせたりすると、チャレンジにもなるし、自分自身がリラックスできるファッションになる。メガネというのは、その最後の仕上げでもありますね。今日このメガネを掛けたいからシンプルなスタイルで、というふうに考えることもあるし、どれもなくてはならない大きなアイテムですよね。

便利さとオシャレさを叶える、
調光レンズに驚きました。

レンズに求めているものはありますか?

レンズにこだわるというのは目にこだわるということだと思い、時間をかけて調べてもらって、レンズをつくったことがあったんですよね。その時に、視力と度数が合っているだけでなく、さらに何段階もこだわれる部分があることを知りました。私にとっては、度数のために厚くなってしまうところを限界まで薄くできたり、ブルーライトやUVカットなどの機能があることは大事ですね。

人それぞれ、瞳の位置も生活習慣も違う。オーダーメイドで作ると誰ひとりとして同じレンズになる人はいないんですよね。今回、川上さんのフレームにツァイスの調光レンズ「PhotoFusion」のブラウンカラーを入れて試していただいていますが、使ってみていかがですか?

室内では無色に近いのに、紫外線に当たるとしっかりと色が付く。色が変わっても、クリアさは全く失われない。初めて体験しましたが、すごいですね。どれくらい紫外線が強いところにいるかというメーターにもなるし。外に出る時にサングラスに掛け変えなくても、そのままパッと出られるところも便利です。

同じタイプの調光レンズは全部で5色ですが、最初から少し色が付いていて、さらに濃くなるものなどもあります。また、通常のカラーレンズも様々なカラーを揃えています。

すごいバリエーションですね! グラデーションも気になりますし、これもメガネになるのか、というような色もありますね。似合わないだろうと思っていたものが、実はそうではないとか。こんなにたくさんの色があれば、既成概念を揺るがしてくれますよね。

色だけでなく、耐キズ、帯電防止、反射防止、ブルーライトカット、抗ウイルス・抗菌コート、撥水コートなど、様々なレンズコーティングがありますが、気になる加工はありますか?

子育て中でレンズにキズを作るシチュエーションがたくさんあるので、耐キズは気になります。お気に入りのメガネにキズがつくと、やっぱりショックなんですよね。人って1日のうちに無意識に顔を何千回と触っていると言われますが、それによってレンズにも脂が蓄積される。メガネを拭く回数が多いとキズにもつながるので、それに強いのは嬉しいです。あとはやっぱりブルーライトカットは仕事柄、必須ですよね。今は抗ウイルス・抗菌もあった方がいいし……と考えると、全部気になりますね。撥水コートも、あれば雨の日のストレスが軽減されそうです。

シチュエーションごとに手にする
メガネの数だけ、特別な時間がある。

レンズも年々進化していますが、メガネ自体の悩みやストレスはありますか?

基本的に規格があるものなので、どうしても骨格とのズレは気になりますよね。やっぱり“つけている”という感じがしてしまう。できればストレスなく、自分の一部のようなものがあればいいと思うけど、本当に身体化するのがいいのかどうか、着脱可能だからオシャレも楽しめるのかなとも思います。だって、スーツやオシャレなセットアップを着る時って、ラクではないですよね。でも、着ているという緊張感が、特別な時間にするということは絶対にある。オシャレとしてのメガネも、そうですよね。だから、ハレのメガネ、日常のメガネ、あるいはその間のメガネと、いろんなメガネを持っておく。目は一対しかないけれど、その時々の自分の気分とシチュエーションに寄り添ってくれるようなメガネが、たくさん手に取れるといいなと思いますね。

今後、メガネやレンズに備わって欲しい機能はありますか?

私が若かったら、ちょっと目が大きく見えるような、盛れるビューティプラスメガネとかでしょうか(笑)。目の色もカラコンをしているように変えられたり、お化粧しなくてもしているように見えたり、少しだけ黒目を大きくしたりとか……。今はレンズが薄くなっているので瓶ぞこメガネみたいなことはなくなりましたが、度が強いほど目が小さく見えてしまうコンプレックスはやっぱり残っているので。昔はそれで、メガネを外した時のギャップ萌えみたいなこともありましたが、その逆のことが起きる可能性もありますね(笑)。

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川上未映子
小説家
大阪府生まれ。デビュー小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。ほか代表作に『ヘヴン』『すべて真夜中の恋人たち』『愛の夢とか』『あこがれ』など。詩集に『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』『水瓶』がある。ほかに、村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など。2019年に発表した最新刊『夏物語』は、毎日出版文化賞を受賞。英、米、独、伊などでベストセラーになり、世界40カ国以上で刊行が進められている。
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