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    気づいている人はまだ少ないけれど
    これからはレンズの時代なんです。

    いとうせいこう
    作家・作詞家・ラッパー・俳優
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    2021.9.8

作家であり、演出家であり、ラッパーであり、タレントでもある。そんな多才な彼をいとうせいこうさん“たらしめている”大きな要素のひとつがメガネだ。攻めるメガネと守るメガネを使い分け、キャラクターを演出しながらも、メガネに追いつかれないように逃げている。デザインを重視しているかと思いきや、最も大事なのはレンズだと言い切る。最後はレンズの未来にまで言及するユニークなお話をたくさんお伺いしました。

メガネにキャラクターを求めつつ
メガネの影響力から逃げている。

いとうさんといえばやはりメガネが印象的です。メガネ歴はどれくらいでしょうか?

それはもうめちゃくちゃ長いですよね。たしか、中学のときに初めて黒板が見えないってことに気づいて、それを親に言ったら『なんで今まで言わなかったんだ』って怒鳴られて。そういえばその頃、急激に成績が下がっていたんですよね。

成績が下がるまで我慢していたんですね(笑)。

僕は早生まれで小さかったから、席が前の方だったのでまだなんとか黒板は見えていたんですよ。それでごまかしごまかし…。それから黒縁のメガネをあてがわられてずっと今まで付き合っているので、メガネ歴はもう…45年くらいですか。しかも割と“メガネキャラ”みたいにして世の中に出てきたこともあって、思い入れは強い方だと思います。

現在は何本ぐらいメガネをお持ちですか?

うーん、何本くらいだろう。多分、60~70本ぐらいかな。これは僕の性格なんだけど、他人に「一定の僕像」を持たれたくないっていう気持ちがすごくあるんです。だから仕事もどんどん変わっていっちゃう。メガネも『この人といえばこのメガネ』って思われたらもうダメ。次のメガネを探しちゃう。追いつかれたくないんですね。

ずばり、メガネの魅力とは?

自分の可能性を広げてくれるもののひとつかな。僕は「LUNETTES du JURA(リュネット・ジュラ)」というメガネのセレクトショップにもう35年ほど通っているのですが、そこの社長である高橋さんという方に「もっといろんなメガネをかけなさい。人は最初にかけたメガネにとらわれがちで、それと異なるものを似合わないものと思い込んでしまうけど、そんなことはないのだから」と言われて、そう心掛けています。すると、面白くて…。一見、すっとんきょうに見えるメガネもかけてみると意外としっくりきたりする。そのおかげで着る服が変わったり、ライフスタイルの幅がぐんと変わったりもするんですよ。自分が思っている自分なんて、すごく狭い世界のことなんだなって。そういうのって、面白いですよね。

「メガネがアイディンティティのひとつになる」ということですね。

そうですね。それに僕は“人を喜ばせる”って言う意識を持たなければいけない職業じゃないですか。まあ、作家のときは全然必要ないですが、テレビや表に出るときに自分にこもっているメガネをつけているようじゃがっかりしますよね。そういう意味では、自分を鼓舞するもの、エンジンをかけてくれるものがメガネでもあるんです。

逆に自分の世界にこもりたいときは、地味な守り用のメガネをかけます(笑)。フレームを変えてもいいし、レンズの色を変えてもいい。それだけで随分と自分のマインドセットが変わるところがメガネの奥深さですよね。

僕はレンズをカスタマイズできる日を
ずっと待ち続けていたんです。

今現在、レギュラーで活躍しているメガネは何本くらいですか?

3、4本かな。どちらも「LUNETTES du JURA(リュネット・ジュラ)」で購入したもので、こちらが〈theo(テオ)〉というアントワープのブランド。そしてこちらが〈HENAU(エノウ)〉というブランドで、ここ数年、このブランドが出すフレームが大好きでよくチェックしています。

それぞれにレンズを入れていると思いますが、レンズに対するこだわりはありますか?

もちろんです。メガネの道具としての側面を考えれば、レンズが重要ですよね。とても精密なものだし、その精度次第で自分の生活が変わるわけですからね。

現在使われているレンズのスペックはすべて同じですか?

同じですが、今回はお気に入りのフレームのレンズを薄いものにしたいと思ってここに来ました。僕は目が悪いのでレンズが厚めなのですが、長時間かけていると重くて疲れてしまう。どうにかこのレンズをカスタマイズしたいと思っていたら、ようやくカールツァイスさんからお話をいただいたわけです。僕はこの日をずっと待っていたんです(笑)。

レンズの厚さはやはり重要ですね。

ものすごく重要です。重たいとやっぱり疲れますし、分厚いレンズだと目も小さく見えます。そもそも厚いレンズは搭載できないフレームもある。レンズをカスタマイズできる自由度があるだけで、世界は大きく変わります。

メガネの技術はここまできたかと
ワクワクします。

今回はツァイスの次世代測定機器を使ってさまざまな目とメガネの検査を受けていただきましたが、いかがでしたか?

僕は緑内障を患っているので、定期的にきちんとした検査を受けているんです。加えて、メガネ店にもよく行くのでついでに視力測定をしたりして、割と目に関してはいろいろなものをあてがっている方なんですけど、それはあくまで視力を中心としたもの。今回のように、角膜とフレームまでの距離とか、レンズに対して視点の中心がどこにくるとか、そういうことはあまり調べたことがなかったので、とても興味深かったですね。

自分が今使っているフレームのレンズ面の傾斜を計測して、ノーズパッドの高さも考慮に入れて、それに最適なレンズを作ってくれるなんて思いもよりませんでした。メガネの技術はここまできたんだなと思います。なんかちょっとワクワクしますよね。それに何より、間違いのないレンズが手に入ることに安心します。

それと、アバターね。あれがもっと進化すれば自宅にいながらにしていろんなフレームをかなり高い精度でバーチャル試着できる。バストアップだけじゃなく、全身で見ることができたらさらにいいですね。

自分の分身画像が作れるアバター機能は、運用開始に向けて鋭意開発中。将来的には自宅にいながらメガネの試着ができる画期的なシステム。

厚さ以外にもレンズにはさまざまな機能がありますが、こだわりはありますか?

やっぱりブルーライトカットかな。それとUVカットと偏光も入れています。それに傷防止性や帯電防止性ももちろん備えていてくれると嬉しいですね。メガネの傷や汚れは本当にがっかりしますからね。そういった細かなストレスがなくなっていくと嬉しいです。

この春、ツァイスから新たに抗ウイルス・抗菌コートレンズも登場しました。コーティングに銀を含ませることで菌が増殖しづらい効果が備わっています。

レンズで“抗ウイルス・抗菌”って話として自慢できますよね。もうそんなレンズがあるんだぞって。

レンズが未来を担う時代がやってくる。

レンズに求める新しい機能などはありますか? 

メガネレンズとVR、AR機能の高次元での融合でしょうか。メガネが情報機器になるなんて、少し前だったら漫画やSF映画の世界の話だったけど、いよいよ現実的になってきた。レンズはものを見るためものだけじゃなくなっていくのは確実です。情報機器であるためには薄くて軽い必要があると思うし、なおかつやっぱりおしゃれじゃないとかける気になれませんから。近い将来、きっと実現しているんだろうって思いますけどね。

身近なアイテムすぎて気づいていない人が多いけど、実はこれからは“メガネの時代”。バーチャルな映像が映るための機器になる。それがすごく楽しみですよね。我々はそういう時代に生きているんです。カールツァイスさんにも大いに期待しています。

※掲載の写真はツァイスのカメラレンズを使って撮影しております。

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いとうせいこう
作家・作詞家・ラッパー・俳優
1961年生まれ、東京都出身。1988年に小説「ノーライフ・キング」でデビュー。近著に「鼻に挟み撃ち」などがある。音楽活動においては日本にヒップホップカルチャーを広く知らしめ、日本語ラップの先駆者の一人である。みうらじゅん氏とイベント『ザ・スライドショー』をプロデュースするなど幅広いジャンルで活躍中。現在はnoteで「ラジオご歓談!」を配信中。
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